前編ではいちごの選び方、食べ方についてお話を伺いました。
いちごソムリエの宮崎さんおすすめの食べ方として出てきた「いちごの食べ比べ」のお話。たしかに、あまおう、とちおとめ、紅ほっぺ、などなど、食べ比べができるほどいちごの品種はたくさん存在しています。詳しい特徴はわからないけれど、いちごの品種名をいくつか知ってはいる、という人も多いはず。後編はそんないちごの品種について詳しく伺います。
後編も先生はこの方
株式会社イチゴテック|宮崎 大輔さん1988年生まれ、長野県出身、信州大学大学院修士課程卒。大学院でいちごを研究し、2015年からは農業コンサルタントとして海外でいちご栽培の技術指導を行う。
“へた”を見ただけで品種を当てる”いちごソムリエ”の肩書をもち、自身が運営するYoutubeのチャンネル登録者数は17万人。
とにかく甘いいちごは「章姫(あきひめ)」
ースーパーでも色んな種類のいちごを目にするのですが、日本にはどのくらいの数のいちごがあるのですか?
宮崎:日本のいちごの品種数は300くらいです。
いちごの品種登録は20年か25年経つと切れてしまうため、すでに切れているものもありますし、品種登録待ちのものもあります。そのため、はっきりとした数はいえないですが、300くらいあると思ってよいと思います。
ーそんなにあるんですね!品種によっての違いも知りたいです。まずはじめに、とにかく甘いいちごを教えてください。
宮崎:甘さ、でいうと「章姫(あきひめ)」がおすすめです。
酸味がない品種なのでとにかく甘いです。全国的にも作られていますし、いちご狩りでも人気の品種です。
ー甘さと反対にすっぱく、酸味が強いいちごはどれですか?
宮崎:酸味が強いものは「女峰(にょほう)」と呼ばれるいちごになります。
昔はたくさん作られていた品種ですが、生産者が激減して幻のいちごになりました。現在は、香川県など一部の地域でのみ栽培されています。
ーたしかに女峰ってはじめて聞きました。私たちが住んでいるのが福岡県のせいか(OREC本社は福岡県広川町)、いちごといえば「あまおう」のイメージが強いのですが、いちごの中でもあまおうは有名ですか?
宮崎:あまおうは日本で一番有名ないちごと言ってよいと思います。味も美味しいいですし、見た目も大きくて赤いです。
実は、あまおうは福岡県限定で生産されているいちごです。逆をいえば、福岡県で栽培されたものにしか、あまおうという名前は使えません。
そういった中で、全国どのスーパーにいってもあまおうは品質と価格の両方が守られているため、すごくブランドがしっかりしているいちごだと思います。
いちごソムリエ宮崎さんが選ぶ、コスパNo.1いちごはとちおとめ
ーあまおうのように甘くて一粒が大きいいちごはたしかに美味しいんですが、お値段が気になるところです…。気軽にいちごを楽しめるように、価格と大きさと味のバランスで見たとき、一番コスパが良いいちごはどれになりますか?
宮崎:コスパが良いでいうと、おすすめは「とちおとめ」ですね。日本で最も栽培されている品種なので、比較的安価で購入できます。とちおとめは特に3月以降、値段が安くなります。それでいて、酸味と甘さのバランスが良いので、味も美味しい品種です。
ーたしかに、とちおとめはどの地域に行っても、スーパーでよく目にします。
宮崎:はい、全国どこのスーパーでも売っていると思います。実の大きさについては、冬は大きめで春になると小さくなっているので、季節にあわせて注意してみてください。
宮崎さんがいま一番注目している品種はありますか?
宮崎:いま一番注目しているのは「とちあいか」と呼ばれる品種です。とちあいかは、いちごの生産量が最も多い栃木県が、今後の主力品種にすると決めたほど優れた品種です。今後は全国で、とちあいかがたくさん販売されるようになると思いますよ。
ー具体的にどういった点が優れているんですか?
宮崎:もちろん味が良いというのは大前提にあるんですが、とちあいかは葉っぱの生育が優れているので、元気に育ちやすいです。育てやすいということは、収穫量も多くなります。とちあいかは外側が固めの品種のため、輸送中に傷がつきにくいのも特徴です。栃木のいちごは全国に出荷されるため、全国輸送に耐えられるというのも魅力になっていると思います。
ー栃木は昔からいちごで有名ですが、いちごの生育に適した地域なんですか?
宮崎:栃木は日本で一番いちごを育てるのに適した地域です。いちごは冬の作物ですが、栃木は夏よりも冬の方が日照時間が長いという珍しい気候をしています。そのため、冬の間でも光合成速度が増加し、いちごの品質が良く、収穫量が多くなることからいちご栽培に向いているんです。それでいうと、同じく冬も暖かく日が差しやすい、太平洋側の静岡県や九州もいちご栽培に適しているといえます。
日本のいちごはおいしい
ー一通りお話を聞いてきましたが、いちごの品種はわりと有名なものも多いですし、日本っていちご好きな人が多いですよね。
宮崎:そうですね。いちご狩りもレジャーのひとつとして確立されていますし、日本はいちごが好きな国だと思います。世界でみるといちごは日本ほど特別視されていません。
ーそれはどうしてでしょう?
宮崎:海外のいちごは、日本のいちごのように甘くないものが多いですね。食べ方もそのままというよりは、シリアルにいれたり、ケーキに入れたりして食べるのが一般的です。いちご狩りも日本のように少しずつ食べて楽しむのではなく、 バケツで大量にとります。いちご自体好まれはしますが、日本のいちごのように大粒でジューシーなものは、海外には少ないため特別視はされないのでしょうね。
ー日本のいちごは世界的にみてもおいしいのですね。家庭菜園初心者が、いちごを自分でつくるのはやはり難しいですか?
宮崎:家庭菜園でいちごを育てるのは難易度が高いと思います。できたとしても、家庭菜園のいちごとスーパーのいちごを比べると、出来栄えは大きく異なります。野菜の場合は、家庭菜園で作ってもお店で売られているものとあまり差がでないと思いますが、いちごは家庭菜園の場合だと、大きさも味もすごく劣ってしまいます。がんばって、努力しておいしくないものを作るよりは、スーパーで買う方が手頃かなと。家庭菜園上級者になったらいちごにチャレンジするのも良いかもしれません。
ーなるほど。自分で作ろうとせず、今回学んだ知識でスーパーで美味しいいちごを買いたいと思います!
いちご先生として、いちごソムリエの宮崎さんに色々と教えていただきました。クリスマスの時期はクリスマスケーキ需要が高まるため、日本中でいちごが品薄になるそうですが、クリスマスを過ぎた今の時期は、いちごを買っておいしく食べるチャンスです。みなさんも初めての品種や食べ方で、いちごをさらに楽しんでみてはいかがですか?